天使・前2。

『小さくても、奇跡しか、いらん』

袋小路だった。追い詰められた。私じゃなく、ねずみ。私の前を走っていたねずみが、私の前を走っていた猫に追い詰められた。厳密にいうと、私の前を走っていたというより、私は彼らを追いかけていた。
猫がねずみをいたぶるシーンがみたいという、ただの欲望だった。
でも、ちょっと考えて、それはそれで血生臭いからヤダな、とも思った。生臭い感じがしたらすぐに去ろう、と思っていた。
とりあえず、こちらに背を向けている猫と、ジリジリした顔で猫を見ているねずみを写メールで撮らなきゃ!そう思って、鞄に手を入れ、携帯電話のストラッブを掴み取り出そうとすると、ストラップの紐に飴ちゃんが引っ掛かり転がり落ちた。

それは、丸い飴をセロハンで包み、両端をひねった、昔の飴ちゃんだった。しかも塩胡麻味。
あぁっ、ばか!なにやってんだ、私。こんな緊迫したシーンで!

猫が飴ちゃんに気付いた。猫は飴ちゃんに近づき、匂いを嗅ごうとしている。

おぉ!なるほど!ナイス私!
ねずみ!今のうちに、猫の脇を通ってはよ逃げろ!

興奮しながら、袋小路の隅にいるねずみに視線を移そうとしたら、黒い固まりが視界をよぎった。

あ!ねずみ!
ねずみ、逃げんと、猫と一緒に飴ちゃんに興味持ってもうた。
おまーえーは、あーほーかー。
せっかく、私が助け舟だしたったのに!ま、偶然やけど。

猫とねずみは塩胡麻飴ちゃんを挟んで向かいあってる。
猫が飴ちゃんをくわえようとした。瞬間、ねずみが猫の鼻を噛んだ。
へげっ!つった。
ねずみ、私の右側、通って逃げよった。
『窮鼠、猫を噛む』や!思た。
ちょっと意味ちゃうような気がする思たけど、もう、次の瞬間には眠りに落ちとったわ、私。